あるテレビ番組のディレクターが心霊番組の撮影をしていた。

母親、息子、娘の3人家族のインタビューカットから始まった。彼らは目に涙を浮かべながら、父親の事を話してくれた。

その様子を見て、ディレクターは満足のいく映像が撮れそうだと感じた。

次に霊能者が登場して、父親が着ていた服から霊視をすることになっていた。

霊能者は服を握り締め、霊視を始めた。
長い沈黙。
その沈黙は予定よりもずっと長く続いた。

何かあったのだろうか。普段なら、流暢な話しぶりで有名な霊能者が、霊視に対して曖昧なコメントしかしない。それもブツブツ呟いているだけで、様子がおかしい。

ディレクターはコメントをどうにか引き出そうと気の利く質問を投げかけたが、霊能者はしどろもどろになっていた。

スタッフもこの緊急事態にどうしていいかわからず、立ち尽くしたままだ。
「これでは番組が作れそうもない…。やばいことになったぞ」
ディレクターは半ばパニック状態になっていた。

帰りのマイクロバス内では、どよーんとした空気が漂っていた。ぐったりしているディレクターに、霊能者がゆっくり近づいてきて呟いた。

「惨殺されているよ」

ディレクターは驚きの表情を見せた。さらに、霊能者は恐るべき発言をする。

「父親は惨殺されているよ、あの家族に」

「家族にだって!?」

「殺人者の前では話せないよ。家族が住んでいる家からそう遠くない裏山に埋められているよ」