大学生のグループが観光地へ一泊旅行をした。仲間のひとりがビデオカメラを持参し、仲間の楽しそうな様子を撮影していた。

旅行から戻りビデオを見返すと、変なものが映っていることに気がついた。

時間は深夜12時頃、場所はどこかのトンネルだ。辺りは真っ暗で、かろうじて街灯の明かりが見える。

トンネルの中から、手を振りながら歩いてくる仲間の女の子が見えた。その右手の後方部に7、8歳くらいの男の子が映っている。

男の子なんかいただろうか…。

手前にいる女の子は薄暗く映っているが、その男の子はやけにはっきり見えて、半ズボンを履いて後ろを向いていることも分かった。

トンネルの近くには住居もなく、こんな夜中にひとりでトンネルにいるのはどう考えても不自然だ。しかも、後ろを向いたまま全く動かない。

仲間内で、男の子は幽霊だと大騒ぎになった。
うわさを聞いて、興味本位でビデオを見せてくれという人も出てきた。

彼らは得意気になって、いろいろな人にビデオを貸した。

あるとき、ビデオを見たひとりが不思議なことを言った。

『男の子の横顔が見えそうで見えないところが怖いよな』

横顔?男の子は後ろを向いていたので、横顔は見えないはずだ。さらに、別の奴がこんなことを言った。

『振り返ろうとしてこっちを見ている右目が怖いよ』

一体どういうことなんだ…。
手元に戻ってきたビデオを、グループ全員でもう一度見ることにした。

トンネルの中から歩いてくる女の子。ここは前に見たときと同じだ。その右奥の方で男の子が後ろ向きに立って、顔を横に向けている姿があった。右目だけがこちらを睨んでいる。

彼らは震え上がった。
ビデオの中で、男の子が少しずつこちらを振り返っているのだ。このままだと完全に振り向いてしまう。彼らは身の毛がよだつ思いで、早急にビデオを処分した。